胃もたれ、胸やけ、逆流性食道炎、胃潰瘍…。そんな胃の不調によく使われる薬の一つが「制酸剤」です。その中でも、病院や薬局でよく処方されるのがH2ブロッカー・PPI(プロトンポンプ阻害薬)・P-CABと呼ばれるタイプの薬。どれも「胃酸を抑える薬」ですが、それぞれ仕組みや特徴に違いがあります。
今回はこの3つの制酸剤について、どんなふうに効くのか、どう違うのかをわかりやすくまとめてみます。
胃酸ってそもそも何のためにあるの?
まず前提として、胃酸(胃の中の酸)は食べ物を消化するためにとても大事なもの。特にたんぱく質を分解したり、食べ物と一緒に入ってきた細菌を殺したりする役割があります。
でも、ストレスや生活習慣の乱れ、ピロリ菌感染などがあると、胃酸が出すぎたり、胃の粘膜が弱くなったりして、胃に炎症や潰瘍が起こることがあります。こうした症状を抑えるために、胃酸の分泌をコントロールする薬が使われるわけです。
H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)
【どう効く?】
ヒスタミンという物質が胃の壁にあるH2受容体にくっつくと、胃酸が分泌されます。H2ブロッカーはこのH2受容体をブロックすることで、胃酸の分泌を抑えます。
【特徴】
- 比較的即効性がある(30分〜1時間で効き始める)
- 1日2回(朝・夕)飲むことが多い
- 効果はPPIよりもやや弱め
- 市販薬にも多く含まれている(例:ファモチジンなど)
【使いどころ】
・軽い胃もたれや胸やけ
・薬の効きを早く実感したいとき
PPI(プロトンポンプ阻害薬)
【どう効く?】
胃酸を作る最終ステップに「プロトンポンプ」という仕組みがあります。PPIはこのプロトンポンプを直接ブロックして、胃酸の分泌を強力に抑えます。
【特徴】
- 腸溶性で胃酸で溶けない薬になっている(酸性下で薬の効果がなくなるため)
- 効果が強く、長く続く(1日1回で十分なことが多い)
- ただし、最大効果が出るまでに2、3日かかる場合がある
- 胃潰瘍や逆流性食道炎の治療で第一選択薬
- 長期使用による副作用(腸内細菌バランスの変化、ビタミンB12不足など)が話題になることもある
【使いどころ】
・胃潰瘍、十二指腸潰瘍
・逆流性食道炎(GERD)
・NSAIDs(痛み止めなど)による胃の保護
P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)
【どう効く?】
PPIと同じく「プロトンポンプ」をブロックしますが、仕組みが少し違います。PPIは体内で活性化されてから効きますが、P-CABは胃の中の酸の状態に左右されず、直接プロトンポンプに働きかけるのが特徴です。
【特徴】
- PPIよりも即効性が高い(1回目からしっかり効く)
- 持続時間も長く、1日1回でOK
- 日本で開発された薬(代表例:ボノプラザン)
【使いどころ】
・PPIで効果が不十分だった人
・より早く、強い制酸効果が必要なとき
・ピロリ菌の除菌療法にも使われることがある
まとめ:どれがいい薬なの?
「どれが一番いい薬?」と聞かれることもありますが、それは症状の重さやライフスタイル、他の薬との相性などによって変わります。
薬のタイプ | 即効性 | 効果の強さ | 持続時間 |
---|---|---|---|
H2ブロッカー | ○ 早め | △ やや弱め | △ 半日程度 |
PPI | △ 遅め | ◎ 強力 | ◎ 1日以上 |
P-CAB | ◎ 速い | ◎ 強力 | ◎ 1日以上 |
制酸剤はどれも、使い方を間違えたり、自己判断で長期使用すると思わぬ副作用が出ることもあります。胃の不調が続く場合は、自己判断せずに医療機関で相談するのが大切です。
参考までに:
- 逆流性食道炎が気になる人は、寝る前の食事を控えたり、枕を高くして寝るのも対策になります。
- 制酸剤と一緒に、胃粘膜を保護する薬(ムコスタやレバミピドなど)が処方されることも多いです
医療や薬のことでまとめたことを
発信していきます!